HEALTH JOURNAL

腰痛とは?さまざまな原因と正しい見分け方

画像だけでは決まらない、腰痛を多面的に理解するための基本

執筆:YOKOHAMA BASE編集部
監修:宮城 智哉(理学療法士)

腰痛について理学療法士へ相談する人

この記事でわかること

腰痛は一つの病名ではなく、さまざまな状態で起こる症状です
診療では危険な原因、神経症状、その他の腰痛を順に整理します
画像所見だけで痛みの原因が決まらない場合があります

腰痛とは?

腰痛は、腰から殿部周辺に感じる痛みや不快感の総称であり、単一の病気の名前ではありません。急に起こるものも、3か月以上続くものもあり、脚の痛みやしびれを伴う場合もあります。原因や経過が異なるため、『腰が痛い』という情報だけでは適切な対応を決められません。

診療ガイドラインでは、問診と診察から重大な病気の可能性、神経への影響、痛みの経過、生活や仕事、睡眠、心理社会的要因などを総合的に評価します。画像検査は必要性を判断して行うもので、すべての腰痛に直ちに必要なわけではありません。

まず見逃したくない原因

頻度は高くなくても、骨折、感染、腫瘍、内臓疾患など早期評価が必要な原因があります。年齢、外傷、発熱、がんの既往、免疫抑制、ステロイド使用、夜間痛、体重減少などは診察で確認されます。ただし、徴候が一つあるだけで重大疾患と決まるわけではなく、組み合わせと経過を医療者が判断します。

排尿・排便がしにくい、会陰部の感覚が鈍い、両脚の力が急に入りにくい、発熱を伴う強い腰痛、大きな外傷後の痛みがある場合は、早急に医療機関へ相談してください。

神経が関わる腰痛

椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などでは、腰痛に加えて脚へ広がる痛み、しびれ、筋力低下がみられることがあります。痛む場所だけでなく、感覚、筋力、反射、歩行、特定の動作との関係を確認します。画像所見と症状が一致するかも重要です。

特定の組織だけに絞れない腰痛

重大疾患や明確な神経障害がなく、診察や一般的な検査だけでは痛みの発生源を一つに特定できない腰痛も多くみられます。これは『原因がない』『気のせい』という意味ではありません。筋肉、関節、椎間板、筋膜などの組織、負荷のかかり方、痛みの感じやすさ、睡眠、ストレス、活動量などが複合している可能性があります。

画像の変化と痛みは一対一ではありません

加齢に伴う椎間板や関節の変化は、痛みのない人にもみられます。一方で、画像上の変化が小さくても強い痛みを感じることがあります。そのため、MRIやX線の言葉だけを原因と決めつけず、症状、診察所見、生活への影響と合わせて解釈します。

慢性腰痛は生物・心理・社会の視点で考える

痛みが長引くと、組織の状態だけでなく、神経系の感受性、運動への不安、睡眠不足、気分、仕事や家庭環境も回復に影響します。WHOも慢性一次性腰痛に対し、教育、運動、必要に応じた心理的支援などを組み合わせる全人的な対応を重視しています。これは心理だけが原因という意味ではなく、回復に関わる複数の要素を扱う考え方です。

受診時に伝えると役立つこと

いつ、どのように始まり、痛みがどこへ広がるか
脚のしびれ・脱力、発熱、外傷、排尿排便の変化の有無
楽になる・悪化する姿勢や動作、睡眠と仕事への影響
既往歴、服薬、これまでの検査や治療とその反応

まとめ

腰痛は症状名であり、原因と影響は人によって異なります
重大疾患と神経障害の可能性を確認したうえで、多面的に評価します
画像だけ、姿勢だけ、一つの組織だけで説明できない場合があります
長引く腰痛では、活動、睡眠、心理社会面を含む全体像が大切です

原因を考えるときの3つの入口

腰痛の評価では、①腰そのものの組織、②神経、③腰以外の病気という入口から考えます。腰椎の関節、椎間板、筋肉、靱帯、筋膜などは痛みに関与し得ます。神経根が刺激されれば脚へ広がる痛みやしびれが起こり、腎・尿路、消化器、婦人科、血管など腰以外の問題が腰背部痛として感じられる場合もあります。最初から一つに決めつけず、問診と診察で可能性を絞ります。

急性・亜急性・慢性で見方は変わります

発症からの期間は経過を考える手がかりです。一般に急性は4週間未満、亜急性は4週間から3か月、慢性は3か月以上と整理されますが、境界だけで治療が自動的に決まるわけではありません。急性期は重大な原因を除外しつつ回復を妨げないこと、長引く場合は身体機能に加えて睡眠、不安、仕事、過度な安静などの維持要因を見直すことが重要です。

『ぎっくり腰』も原因名ではありません

ぎっくり腰は急に起きた強い腰痛の通称です。物を持ち上げた瞬間だけでなく、起床時や何気ない動作で始まることもあります。強い痛みがあっても必ず重い損傷があるとは限りませんが、外傷、神経症状、全身症状があれば評価が必要です。動ける範囲で姿勢を変え、短い歩行など日常動作を少しずつ保ちます。

痛みの強さと組織損傷の大きさは同じではありません

痛みは体を守る警報ですが、その音量は組織の状態だけで決まりません。睡眠不足、疲労、過去の強い痛みの経験、不安などで敏感になることがあります。反対に、危険な病気でも初期の痛みが強いとは限りません。痛みの数字だけでなく、脚の力、感覚、発熱、夜間の経過、生活機能を合わせて確認します。

検査は『結果が方針を変えるか』で考えます

X線は骨折や配列、MRIは椎間板、神経、感染や腫瘍などの評価に役立つ場合があります。一方、痛みのない人にも椎間板変性や膨隆が高い割合でみられ、年齢とともに増えます。検査をしないことが放置とは限らず、危険徴候がなく経過が良好なら、まず保存的に対応することがあります。

回復を支える基本行動

痛みを大きく悪化させない範囲で、普段の生活と歩行を少しずつ続ける
同じ姿勢を長く固定せず、楽な姿勢を複数用意してこまめに変える
睡眠、食事、仕事量を整え、回復可能な負荷へ一時的に調整する
『腰は壊れている』と決めつけず、できる活動を基準に回復を記録する

運動に唯一の正解はありません。歩行、筋力トレーニング、有酸素運動、ヨガなど、本人が安全に継続できる方法を選びます。痛みが少し出ることと損傷が進むことは必ずしも同じではありませんが、症状が強く残る場合は負荷を下げて専門職へ相談します。

医療機関では何を目標にしますか?

目標は痛みをゼロにすることだけではありません。眠れる、仕事へ戻れる、歩ける、趣味を再開できるといった生活機能の回復も重要です。痛みの強さ、動作能力、参加できる活動を定期的に確認し、改善が乏しければ診断や計画を見直します。

免責事項

本記事は一般的な健康情報であり、個別の診断・治療を目的とするものではありません。症状が強い、悪化している、心配な徴候がある場合は医療機関へ相談してください。

よくある質問

腰痛の多くは原因不明なのですか?

一つの組織だけを痛みの発生源として確定できない腰痛は多くありますが、『原因がない』という意味ではありません。複数の身体的・心理社会的要因を評価します。

腰痛ならMRIを撮ったほうがよいですか?

すべての腰痛に直ちに必要とは限りません。危険な徴候、神経症状、経過などから、結果が診療方針を変えると判断される場合に検討します。

安静にしていれば治りますか?

重大な病気がなく動ける場合、長期間の安静は回復を遅らせることがあります。痛みに合わせて日常活動を保ち、段階的に戻す方法を医療者と相談します。

参考文献

  1. 日本整形外科学会・日本腰痛学会監修「腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版」
  2. WHO guideline for non-surgical management of chronic primary low back pain
  3. WHO Fact sheet: Low back pain
  4. Systematic review of imaging features of spinal degeneration in asymptomatic populations