HEALTH JOURNAL

「坐骨神経痛」は病名ではありません

〜足のしびれは原因を見極めることが大切です〜

執筆:YOKOHAMA BASE編集部YOKOHAMA BASE
監修:宮城 智哉理学療法士)/最終確認 2026年9月8日

腰から臀部、脚へ続く坐骨神経を半透明の解剖表現で示した人物

「病院で坐骨神経痛と言われました」「坐骨神経痛がなかなか治りません」「お尻から足までずっとしびれています」——こうした相談を受けることがあります。

しかし、最初に知っておいてほしいことがあります。

「坐骨神経痛」は、原因となる一つの病気の名前ではありません。坐骨神経に沿うように、お尻から太もも、ふくらはぎ、足などに現れる痛みやしびれなどの症状を表す言葉として使われています。

つまり、「坐骨神経痛があります」というだけでは、「なぜ、その症状が起きているのか?」までは分からないのです。

大切なのは「坐骨神経痛の原因」を調べること

例えば足にしびれがある場合、腰椎椎間板ヘルニアによって神経根が刺激されている可能性があります。腰部脊柱管狭窄症などによって、神経に影響が生じていることもあります。こうした問題であれば、医学的な評価が重要になります。

腰から骨盤、脚までを一つの身体として示す後面の解剖ビジュアル
腰だけを切り取らず、全身のつながりから症状を見る

しかし、足がしびれている=必ず腰の神経が圧迫されている、とは限りません。ここが非常に重要です。

まず確認したいのは、本当に神経の問題なのか?

私たちが足のしびれを見るときには、単に「どこがしびれていますか?」だけを見るわけではありません。感覚に左右差がないか、筋力が低下していないか、腱反射に異常がないかを確認します。

さらに、どの範囲に症状が出ているのか、腰を動かすことで症状が変化するのか、神経にストレスを加える検査で症状が再現されるのか。こうした情報を組み合わせながら、本当に神経根の障害を疑う所見がそろっているのかを考えていきます。

足のしびれには、病院での評価を優先すべきものがあります

特に注意しなければならないのが、単なる「しびれ」では済まない神経症状が出ている場合です。

足に明らかな筋力低下が出てきた
急速に症状が悪化している
排尿や排便がうまくできない
会陰部周辺の感覚がおかしい
両脚に強い神経症状が出ている

こうした症状では、重篤な神経障害が隠れている可能性があります。この場合に必要なのは、「どこをほぐせばいいのか」を探すことではありません。まず医療機関で適切な検査・診断を受けることが優先されます。

医療者が腰椎MRIを確認している場面
まず医学的な評価で、見逃してはいけない原因を確認する

状態によっては、薬物療法やリハビリテーションだけでなく、手術などの医学的治療が検討される場合もあります。ただし、ヘルニアがあるからといって一律に安静にする、という意味ではありません。必要な医療評価を受け、状態に応じた方針を確認することが大切です。

では、検査で大きな問題が見つからなかったら?

MRIなどで確認しても、症状を十分に説明できるような問題が見つからない。あるいは画像上の変化はあるものの、症状や身体所見との対応がはっきりしない。そうしたケースでは、「異常なしだったから終わり」ではなく、今度は身体全体から症状を考えていく視点が重要になります。

お尻や脚そのものに原因があることもあります

腰以外にも、下肢症状に関係する可能性のある場所があります。臀部では、坐骨神経はさまざまな組織の近くを通っています。深臀部症候群と呼ばれるような、臀部周辺で坐骨神経が刺激される病態もあります。

さらに末梢では、腓骨神経などの末梢神経に問題が生じれば、脚や足にしびれが現れることがあります。同じ「脚がしびれる」という症状でも、腰椎の神経根と末梢神経の問題では、見るべき場所が変わってきます。

「しびれのような感覚」すべてが神経障害とも限りません

患者さんが使う「しびれ」という言葉には、ピリピリする、ジンジンする、重だるい、感覚がおかしい、痛みが脚へ広がるなど、さまざまな感覚が含まれています。筋肉や筋膜などから生じる関連痛が、本人には「しびれている」と表現されることもあります。

だからこそ、「しびれ」という言葉だけで、神経が圧迫されていると決めつけないこと。実際の感覚、分布、筋力、反射、身体の動きなどを確認することが大切です。

画像検査と身体の評価は「どちらか」ではありません

ここで誤解してほしくないのは、「MRIなんて意味がない」という話ではありません。神経障害が疑われるのであれば、医療機関での診察や必要に応じた画像検査は非常に重要です。

一方で、画像だけを見て、身体の状態をまったく見ないのも十分ではありません。どの姿勢で症状が強くなるのか、歩くとどうなるのか、腰を動かすとどうなるのか、股関節や臀部の状態はどうなのか。身体を実際に評価することで得られる情報もあります。

施術者が股関節と下肢の動きを評価している場面
医学的な検査と、実際の身体の評価を組み合わせる

「医学的な検査」と「実際の身体の評価」は、対立するものではありません。両方の情報を組み合わせて考えることが大切です。

全身を見ることには意味があります

身体は、腰と脚だけで動いているわけではありません。歩くという一つの動作でも、足部、足関節、膝関節、股関節、骨盤、体幹など、さまざまな場所が関係しています。

どこかの動きが大きく制限されれば、別の場所がその動きを補うこともあります。その状態が長く続けば、特定の場所に負担が集中する可能性があります。

だからこそ私たちは、「坐骨神経痛だから腰を見る」だけではなく、その人が身体全体をどう使っているのかというところまで確認することを大切にしています。

大切なのは「病院か整体か」の二択ではありません

足がしびれたら病院。異常がなければ整体。そんな単純な二択でもありません。重要なのは、それぞれが得意とする評価を組み合わせることです。

まず医学的な問題が疑われるのであれば、医療機関で必要な検査を受ける。神経障害や重篤な疾患がないかを確認する。そのうえで必要に応じて、身体の動き、筋肉や筋膜、関節、姿勢や歩行などを詳しく評価する。

そうやって複数の情報を統合していくことで、「この人の脚の症状には、何が関係している可能性が高いのか?」を考えていくことができます。

「坐骨神経痛」という言葉で終わらせない

「坐骨神経痛ですね」と言われると、一つの病気が見つかったように感じるかもしれません。しかし本当に大切なのは、「では、なぜ坐骨神経痛のような症状が出ているのか?」という、その先です。

腰椎なのか。神経根なのか。臀部なのか。末梢神経なのか。それとも別の問題なのか。まず危険なもの、医学的治療が必要なものを適切に見極める。そのうえで、痛い場所やしびれている場所だけではなく、身体全体を評価していく。

一つの見方だけで決めつけず、複数の情報を組み合わせて原因を考える。それが、長く続く痛みやしびれと向き合ううえで大切な考え方だとYOKOHAMA BASEでは考えています。

免責事項

本記事は一般的な健康情報の提供を目的として作成しています。個別の診断・治療・医療上の判断を目的とするものではありません。足の筋力低下、排尿・排便の異常、会陰部の感覚異常、急速な悪化などがある場合は、自己判断せず医療機関へご相談ください。

参考文献

  1. 日本整形外科学会. 腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021.
  2. 日本整形外科学会. 腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン.
  3. NICE. Low back pain and sciatica in over 16s: assessment and management.

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